その蹄跡の始まりは昨年8月23日の小倉新馬戦。なんと返し馬中に鞍上・武豊を振り落として、そのまま競走除外となる波乱に満ちたものに。気性の荒さをモロに露呈することになったのだが、むしろ「破天荒」と称されたオルフェーヴルばりのエピソードが彼の大物感をより際立たせるものになったとも言えようか。
仕切り直しの京都新馬戦で楽々と勝ち上がりを決めると、1勝クラスを2戦で突破。そして前走のすみれSではレース直前に落鉄、さらにはスタート後に外に膨れる幼さを見せながらも2馬身半差の圧勝を飾ってみせた。
4戦3勝、2着1回。ここまでの歩みを池江調教師は「もともとモンスター級の素材ではあるけど、一走一走しっかりと段階を踏んでいる点は期待通りだね。(気性的には)まだ油断ならないところもあって、前走の中間にも鞍上が落とされたりしているんだが、だいぶ破天荒さはなくなってきている」と振り返る。
ただ、ディープモンスターの現状については「良くなってはきているが、まだ線が細くて…。カイ食いはまずまずなんだけど、まだ実になっていない感じなんだよね。今回は重賞勝ち馬が相手になるし、舞台も中山よりは広くて直線の長い東京(ダービー)のほうが向いているでしょうね」と皐月賞を目前に控えても評価は辛口。これには池江師独自の“皐月賞観”が下地にある。
「あくまで見据える先はダービーです。いわば皐月賞はダービーに向けてのステップ、試金石ですね。世代のトップクラスと同じレースで刀を交え、どれくらいの競馬ができるか、まずは確かめないと。時計の比較などは机上の計算にすぎないですから」
皐月賞(18日=中山芝内2000メートル)はあくまでステップ。その先を見据えて馬をつくっていく3冠馬トレーナーの深謀遠慮が全ての発言につながっているのだろう。
まだまだ成長段階にあり、位置付け的にはダービーに向けての通過点にすぎない皐月賞ではあるが、それでも勝ってダービーに向かうのが最も理想的なのは言うまでもなかろう。名伯楽の予想をも上回る成長力を見せさえすれば、それが現実のものになっても驚けないし、それでこそディープ(産駒の)モンスターと呼ぶにふさわしい。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
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