本連載「コロナ禍のアスリート」では、まだまだ先行きが見えないなかで、東京五輪メダルを目指すアスリートの思考や、大会開催に向けての舞台裏を追う。
2018年から悩まされてきた長期間のうつ
テニス4大大会の全仏オープン(パリ・ローランギャロス)に出場していた大坂なおみ(23=日清食品)が2日に予定されていた女子シングルス2回戦を棄権。2020年全米、今年2月の全豪に続くグラウンドスラム3連勝が懸かっていたが、戦わずしてコートを去った。 5月31日に自身のインスタグラムで「大会や他の選手、自分の健康にとっての最善は、私が棄権することだと思います。邪魔になりたいとは思っていません」と表明。さらに「2018年の全米オープン以降、長い間うつに悩まされてきたことが真実です。対処にとても苦しんできました」と告白した。 開幕前の5月28日に「アスリートの心の健康状態が無視されていると感じていた。自分を疑うような人の前には出たくない」と大会中の取材に応じない方針を示した。30日の1回戦勝利後は予告通り会見を拒否。4大大会の主催者が違反が続けば全仏で失格、他の4大大会で出場停止となる可能性を通告する中、長期に及ぶ心の病が打ち明けられた。 夢を叶えた歓喜の瞬間が苦悩の始まりだった。’18年9月に全米で優勝し、4大大会を初制覇。決勝で憧れの存在であるS・ウィリアムズ(米国)を破って頂点に立った。当時20歳。ニューヒロイン誕生にテニス界が沸き、メディアも殺到した。注目を浴びる中、’19年全豪も制し、2大会連続のグランドスラム制覇を達成。アジア人として初めて世界ランキング1位に就いた。 脚光を浴びる中、ブレークが重圧を生み、不安定さが目立ち始めた。’19年2月の国別対抗戦フェド杯(現ビリー・ジーン・キング杯)スペイン戦で世界79位の格下に0-6、3-6で完敗。第2セット3―5と追い込また場面では突然コートで泣き始めた。’19年7月のウィンブルドン選手権で1回戦敗退後は会見の途中で「泣きそう」と退出。そのまま会見場に戻らず打ち切りとなった。
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