プロ野球日本シリーズが始まった。
2年連続で「巨人vsソフトバンク」となったが、去年は6年ぶりに日本シリーズに進出した巨人が、ソフトバンクに4タテの惨敗に終わっている。
実は試合内容以上に悲惨だったのは、両チーム地元での視聴率。
4試合平均で40%弱のソフトバンクに対して、巨人は10%弱と4倍の差となった。しかもシリーズ中に開催されたラグビーW杯の「日本vs南ア」と比べると、世帯視聴率は4倍以上だが、T層(男女13~19歳)と1層(男女20~34歳)の個人視聴率では6倍近く開いてしまった。
関東地方では、夜のテレビ番組としてお荷物となっている巨人戦。もし今年、巨人が2勝以上すると、日本テレビおよび系列局には大きなマイナスに作用しかねない。
どんな事情があるのか、分析してみた。
去年の惨状
去年の日本シリーズは、ソフトバンクの4連勝で幕を閉じた。
ビデオリサーチが計測する関東地区の世帯視聴率は、8.4%・7.3%・9.7%・11.8%。全試合の平均は9.4%と一桁だった。巨人が進出した日本シリーズ史上最悪の記録だった。
それでもフジテレビが中継した初戦は、同局前四週平均と比べ2%弱上昇した。TBSの第2戦も、前四週より0.2%上がっていた。
両局のレギュラーと比べると、巨人戦はまだ相対的に意味があった。
ところが日テレが中継した第3戦は、前四週より1.3%低かった。これでは『火曜サプライズ』などのレギュラーを放送していた方がマシだった。
いっぽう第4戦は、前四週を1.2%上回った。
胸をなで下ろしたいところだが、そうは問屋はおろさなかった。実は65歳以上の男性が第3戦より倍増したお陰で数字が上がっただけで、64歳以下の個人視聴率は概ね下がってしまっていたのである。
問題はそれだけではない。
巨人戦の低迷で、ライバル局が視聴率を上げていたのである。例えば第3戦では、TBSがその恩恵にあずかった。裏番組となった『この差って何ですか?』『教えてもらう前と後』などが、いずれも前四週平均を上回った。日テレにとって、巨人戦は日本シリーズでもお荷物だったのである。
1~2戦が日テレという不都合
ただし去年が惨憺たる結果でも、今年も同じとは限らない。
スポーツの試合は、やってみなければわからない。前回4連敗だったからといって、今回も惨敗するとは限らない。
だが日テレおよび系列局の中には、「巨人は2勝以上しないで欲しい」と願っている人がいる。
ふつう日本シリーズは、4勝3敗の接戦となると視聴率が上がり、テレビ局にとって都合が良い展開となる。ところが「今年も4連敗か4勝1敗かで負けて欲しい」というのである。
もちろん「4連勝あるいは4勝1敗」でも大丈夫だそうだ。
ただし両軍の戦力を冷静に分析すると、それは希望的観測が過ぎる。中途半端にもつれ込むより、とっとと敗退してくれた方が被害は少ないという意見なのだ。
何が問題なのか。
実は1~2戦と6~7戦が、巨人の主催ゲームというのが不都合なのだ。去年の主催ゲームは3~4戦で平日だった。ところが今年は土日の開催となり、高視聴率番組が日本シリーズにとって代わられてしまう。つまり被害は今年の方が大きくなる可能性がある。
土日の番組との比較
例えば1戦が行われる土曜日は、日本シリーズがなければ『ILOVEみんなのどうぶつ園』と『世界一受けたい授業』が放送される。
直近の4週平均と比べると、去年のシリーズは世帯でほぼ肩を並べている。ところが個人視聴率では、男性の50歳以上で野球が上回るだけで、他の世代はすべて両番組が上を行く。特に女性の全世代と、男性のT層と1層で大きく落ちるのが痛い。
2戦の日曜日は、被害がもっと大きくなる。
『ザ!鉄腕!ダッシュ!!』と『世界の果てまでイッテQ!』の前4週の平均視聴率は13%台。日本シリーズがこれに追いつくのは大変だ。
しかも去年のシリーズ4戦平均と比べると、個人視聴率ではほぼ全世代で負けており、若年層では3~4倍の開きがある。「スポット広告への影響が甚大になる」と、気を揉む担当者が少なくないのである。
このように週末は、平日より被害が大きくなる。
しかも巨人が2勝すると、28日の土曜日がもう1日奪われる。そして3勝しようものなら、ドル箱の土日夜が2度にわたって消えてしまうのである。
もう一つ頭の痛い問題がある。
各試合がもつれると、中継は最大110分延長が予定されている。その場合、土曜は『嵐にしやがれ』がつぶれる。日曜は『行列のできる法律相談所』がなくなる。共に『みんなのどうぶつ園』や『世界一受けたい授業』より良い数字を持つ番組で、これらが消えた場合の影響は甚大となる。
関東で見られる可能性
ここまで聞いて、「な~に、良い試合をすれば数字も良くなる可能性がある」と反論する方もいるだろう。
ところが答えは、「かなり難しい」と言わざるを得ない。実は巨人戦中継はシーズン中、夜帯で9回放送された。開幕戦こそ視聴率は9.9%あったが、次第に下降して最低では5%台を記録してしまった。
これをインテージ「Media Gauge」の47都道府県別接触率で比べると、巨人戦中継が如何に見られていないかが浮き彫りになる。
巨人・中日・阪神・広島・楽天・日ハム・ソフトバンクの7球団の夜帯中継試合を、それぞれの地元都道府県でどれだけ見られたかを比較してみよう。
数字が低いのは、巨人・中日・阪神の順。いずれも大都市圏の伝統ある球団だ。70~80代の男性こそよく見ているが、残念ながら若年層は極めて低調だ。
いっぽう日ハム・楽天・ソフトバンクは、いずれもパリーグで球団の歴史が浅い。地元のファン開拓に努力してきたチームで、セリーグの伝統球団よりかなり上を行っている。若年層への広がりもある。
ちなみに飛んでもない例外がある。広島だ。
インターネット接続テレビの接触率でもすべて二桁。最高値では22%超えすら出している。優勝が消えたあとの消化試合でも、高い数字をキープし続けた。如何に地元の人々に愛されているチームかがわかる。
平均すると巨人戦中継は、広島の3分の1以下。
残念ながら巨人は、東京で地元球団という愛着を持たれていない。それが日本シリーズだからといって、にわかファンが急増すると期待するのは無理があろう。
日本シリーズが盛り上がる条件
日本一を決めるひのき舞台といえども、よく見られるためには条件がある。
冒頭で述べたが、去年の日本シリーズでは、ソフトバンクの地元福岡の平均視聴率は40%弱だった。
3連覇を決めたソフトバンクの地元福岡では平均38.5%、日本一に輝いた際には瞬間最高で50.3%をマークしている。ラグビーW杯の日本代表戦に引けを取らない成績だった。
ソフトバンクが広島を4勝2敗で破った一昨年は、福岡が30%台で広島は40%超だった。
また日本ハムが広島を4勝2敗で破った2016年は、広島が50%ほど、北海道も40%近くに達していた。
明らかに地方では、地元球団の試合がよく見られている。
関東における巨人戦だけが低調なように見える。メディアの状況にも原因はある。グラフ「各球団の接触率推移」でわかる通り、巨人戦の中継数は極端に少ない。中日や阪神はもっと中継されている分、巨人戦より高い数字を維持している。
さらに放送回数が多く、地元意識の高い地方球団ほど、どんどん数字を上げている。
やはり日ごろの取り組みがあってこそ、大舞台の盛り上がりが高まるというものだろう。
BSと違い地上波テレビは本来、エリア毎に別々の電波を発信するメディアだ。
ところが65年を超えるテレビの歴史では、全国放送が効率の良い番組として重視されてきた。そこに胡坐をかいた巨人戦中継こそ、地元東京で視聴者からソッポを向かれる事態となっている。
今年の日本シリーズは、まだ始まったばかりで結果を即断するのは早すぎるが、残念ながら東京の数字が画期的になるのは難しい。
巨人の位置づけを再考すべき段階に入ったと覚悟すべきだろう。
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