エンゼルス大谷翔平投手(26)が、メジャーでは初の“リアル二刀流”で存在感を存分に発揮した。「1番投手」でパドレス戦に先発。打っては第1打席で中前打を放つなど2打数2安打。投げては4回2安打1失点で5奪三振。3回にはメジャー自己最速を更新する101・9マイル(約164キロ)を計測した。

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昨年は投打で精彩を欠いてしまった大谷だが、今年は明らかに違う。調子の良かった頃と比べても、間違いなく進化している。昨年は上半身が突っ込みがちで、体の左サイドに力がたまっている感じが浅く思えた。しかし今季は、軸足の左足に体重が残っていて、目いっぱいボールを引きつけて打つ打撃ができている。

すべての打席に内容があった。第1打席は外角高めの直球をセンター左にはじき返した。見逃せばボールだろうが、下からかち上げていくように打ちにいき、インパクトの瞬間はヘッドだけをかぶせるように強振できていた。メジャーの打者は下からかち上げて打つタイプが多く、高めの速球に空振りする確率が高くなる。しかし、このようにリストターンさせず、かぶせるようにバットのヘッドを出せれば、空振りをしないどころか長打も狙える。昨年はこねるようなスイングが目立ったが、改善できている。

ビックリしたのは2打席目の四球。サイ・ヤング賞投手の左腕スネルに対し、低めのスライダーをしっかりと見極めていた。打ちにいく始動が早いと、もっとハーフスイングのような形で見逃すが、大谷は余裕をもって見逃せている。右腕との対戦になった第3打席も、外角のスライダーを左中間へ運んだ。ここではボールを引きつけてすくい上げるように打球を上げている。本来の打撃スタイルが、完全に復活していた。

守っている側から見ると「見逃すのかな」と思った瞬間、バットが出てくるイメージ。間近にいる捕手は、打たないと思った後に打ってくるように思うだろう。「二刀流」の難しさだが、昨年は投手で右前腕を故障し、打者としても思うように修正できなかったのだろう。オフの期間コンディションを整え、じっくり調整した成果だと思う。オープン戦とはいえ、メジャーで「1番投手」で先発出場。再び周囲の常識を覆すような“伝説”を期待したい。(日刊スポーツ評論家)