これほどの自信を持ってエース以外の投手を先発に送り出すチームは全国でもそう多くはない。
「球数制限が頭になかったといえば嘘になりますけど、誰かを温存するために竹中(勇登)を先発にしたわけではありません。プロ野球みたいにローテーションを組めるわけではないですから。今日一番状態のいい投手を選んだ結果が竹中だったということです」
優勝候補の最右翼に挙げられていた大阪桐蔭が近江に4-6で敗れ、2回戦で姿を消した。ドラフト候補と騒がれるエース左腕の松浦慶斗をマウンドに送り出すことがないままの終戦だった。
決勝戦まで1週間5試合「500球の球数制限」
エースをマウンドに上げない決断には様々な憶測が飛び交った。
雨天順延が続き、この日(23日)から決勝戦(29日)まで日程が詰まり、「1週間500球の球数制限」の影響が出てくる。決勝戦まで考えると5試合。エースの球数を考えれば、2回戦で登板することは避けたくなるだろう。
故障防止の観点から考えても、この日先発の竹中が好投すれば、2本の軸ができる。交互に先発することも可能となり、一人の投手への負荷は軽減される。
しかし敗戦後の記者会見で、大阪桐蔭・西谷浩一監督はそれらの質問に「先を考えたわけではない」と頑なに否定した。あくまで相手打線を考えた上で竹中を先発起用したと明言。その姿勢に「これが大阪桐蔭の戦い方」という強い意志を感じた。
事実、先発した竹中の状態が悪いわけではなかった。
3回裏にスクイズで1点を許し、4回裏にソロ本塁打を浴びた。しかし1点ずつの失点はそう深い傷ではない。竹中は点差を意識して投げているようで、近江打線を勢いに乗せないピッチングと言ってよかった。5回裏にも1死満塁から1失点するも、ピンチを最小で乗り切る竹中の持ち味は発揮されていた。
むしろ誤算だったのは打線の方だった。1、2回に4点を幸先よく先制したものの、追い上げてくる近江を突き放すことができなかった。
西谷監督はこう悔いた。
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