得点経過だけで見れば、試合中盤まで2点差だった。ソフトバンクが7回に2点を追加した時点で試合への興味は薄らぎ、ノーヒットピッチングを続けていたムーアを投げさせるのか、継投でいくのかを考えてしまった。どちらにしても、7回終了時点で4点差をつけられれば、巨人に勝ち目はない。それどころか「初回で得点できなかった時点」や「2点を先制された時点」で勝ち目がないと感じたファンもいたのではないだろうか。

なぜ、そのような力量差を感じるのか? 答えは簡単だ。「速い真っすぐを打てない」に尽きる。初回、先頭打者の吉川尚が初球の真っすぐを振り遅れのファウル。2球目の真っすぐも差し込まれてショートゴロ。結果は失策で二塁まで進んだが、速い真っすぐに備えていたにもかかわらず、とても打てそうもないという状況からスタート。その後もムーアの高めのボールゾーンにくる真っすぐをことごとく空振り。見極めることもできないのだから、得点できる気がしないのは当たり前。継投したモイネロも森も、速い真っすぐを武器にする投手。誰が投げても打てそうな気配はしなかった。

速い真っすぐを打つためには、力負けしないパワーと、ボールを見極められる技術が必要。簡単に解説するなら、力がないのに力負けしないように振れば引っ張り傾向が強くなり、ミート率は落ちる。ボールを見極めようとする中でヒットを打つには、逆方向に打つ技術がいる。もちろん、打撃の調子によって速い真っすぐを打てるレベルに達している打者もいるが、現時点で打てそうな気配がある打者がいない。

初戦は千賀、2戦目は石川、そして3戦目のムーアはいずれも威力のある真っすぐを投げる投手。ソフトバンクはリリーフ陣も速球派が多い。これでは「勝てる気がしない」のも仕方ない。ただ、巨人の打者に工夫を感じないのは残念。現状の調子でなんとかするなら「極端にバットを短く持つ」とか「ボールの上をたたきにいく」とかあっていい。必ずしも結果に結び付くと限らないが、何もしないで終わるよりはマシ。意地を見せてほしい。(日刊スポーツ評論家)

ソフトバンク対巨人 1回表巨人2死二塁、遊ゴロに倒れる岡本(撮影・横山健太)
ソフトバンク対巨人 1回表巨人2死二塁、遊ゴロに倒れる岡本(撮影・横山健太)