「左利き」で「身長186cmのDF」という“スペシャリティー”を存分にアピールした。日本代表初招集のDF伊藤洋輝(シュツットガルト)が先発で代表デビュー。前半は左サイドバックとして、後半はセンターバックとして2つのポジションで期待値の高さを示した。
気負った様子もなく試合に入り、いきなり存在感を見せたのは前半だ。「周りの選手がうまくボールを預けてくれたし、サポートもしてくれた。良かった。ゲームを支配できた」と振り返ったように、左サイドハーフのMF三笘薫との関係性も良く、試合開始から5分で早くも攻撃参加からチャンスをつくった。
「(三笘)薫くんはドリブルで仕掛けられる選手。それを邪魔せず、効果的な関わりができるようにと思いながらプレーした。薫くんは右利きなので中でプレーしたいだろうから、僕がもっとオーバーラップをしたほうがいいかも」と語るように、狙いがハッキリしているのも好印象だ。
数多く手にしたセットプレーでも可能性を感じさせた。前半21分、26分のCKのチャンスでMF堂安律のキックに頭を合わせてシュート。精度が高ければ、というシーンだった。さらに印象を残したのは前半36分。GKシュミット・ダニエルからのパスを受けて前線に鋭いフィードを送ると、相手DFを背負ったFW浅野拓磨がうまくボールを落とし、先制点につなげた。
「僕は(相手に)プレッシャーをかけられたので、それを回避するために低く蹴ろうとしたが、ちょっと高くなった。なんとか収めてくれて良かった」と言うが、フィードは鮮やかだった。惜しむらくは左センターバックにポジションを移した後半、最終ラインからパスをつなごうとしてボールを奪われ、この日唯一の失点につながった場面だ。
「完全に読まれていた。センターバックがあのようなリスクを冒すプレーでミスから失点につながるのはいけない。二度とリスクを負わないようにしていきたい」と猛省するが、新戦力候補として森保一監督のメモ帳上位に名前が記されたのは間違いないだろう。
W杯のメンバー入りについては「まだ手応えはない。メンバー争いに関しては厳しいと思っている」という。DF長友佑都との争いについても「持ち味というか、プレースタイルが違うし、(長友は)経験も実績もある。クロスのタイミングなどは自分がまだまだ」と謙虚な姿勢を崩さないが、デュエルに関しては「1年間、ドイツでやってきてそこは自信を持っている」ときっぱり。残り5か月、メンバー争いを激しくする選手が台頭した。
(取材・文 矢内由美子)
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