<プロボクシング:WBO世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇11月6日◇東京・後楽園ホール
WBO世界フライ級3位中谷潤人(22=M・T)が2度延期の末に世界初挑戦で世界王座をつかんだ。同級1位ジーメル・マグラモ(26=フィリピン)に8回2分10秒、KO勝ちをおさめた。ダウン経験のない相手を左ボディーからの左フックでダメージを与え、左右の連打でキャンバスに沈めた。コロナ禍で外国選手を招いた国内初の世界戦でデビュー21連勝(16KO)。中1で世界を目指し、中卒で単身米国修行で目指した目標を達成した。一家挙げてのサポートへも恩返しを果たせた。2年ぶりの新王者誕生で、国内男子の現役世界王者は7人となった。
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世界初挑戦発表から266日目。中谷はコロナに散々振り回されながらも、念願のベルトをつかんだ。いつもの新王者誕生の熱気は控えめも、国内一番のホープは拍手に包まれ、夢をかなえた喜びに浸った。
田中恒成が1月に王座を返上し、2月に待望の世界挑戦を発表した。コロナは感染拡大の兆しがあり、3月の米国キャンプ出発時から本人も懸念していた。不安は的中して、直後に4月は延期が決まった。8月に開催を再発表したが、これも延期となった。この間には水面下でも3度日程調整していたが、断念せざるを得なかった。
練習と気持ちを上げたり、落としたりの繰り返しとなった。8月はすでに減量にも入っていた。気持ちが切れかかりながらも57キロを維持し、走り込みは3度行った。試合前恒例の米国でのスパーによる強化には行けなかったが、世界王者寺地拳四朗らと500回以上をこなした。膨大な量をこなし、いつもと違う日常の中でも、その時に備えてきた。
プロデビューの15年に、家族は三重・東員町から中谷のいる相模原市に引っ越してきた。お好み焼き店「十兵衛」をたたんでまでサポートするためだった。昨年8月には郷里名物トンテキが看板の「とん丸」を開店した。再び家族で切り盛りの願いがかなったが、5月には閉店に追い込まれる事態も経験した。
中1でボクシングを始めると、父澄人さんが店の隣に練習場を作り、サンドバッグをつるした。試合前には澄人さんの手とグローブを合わせるのがルーティンだった。「あれで吹っ切れる」。当初は無観客予定が家族も観戦できた。ルーティンも実行して、恩返しのベルトを父に見せることができた。
▽中谷潤人のコメント「1ラウンド目で、いいパンチが入って(相手に)きかせることができて、組み立てやすかった。今後は1つ上の階級を視野に、統一戦、防衛戦と、チャンピオンロードを歩んでいきたい」
◆中谷潤人(なかたに・じゅんと)1998年(平10)1月2日、三重・東員町生まれ。中1でボクシングを始め、卒業後は単身米国修行でアマ14勝2敗。15年4月に1回TKO勝ちでプロデビュー。16年に全日本フライ級新人王、17年に日本同級ユース王座、19年2月に日本同級王座を獲得。171センチの左ボクサーファイター。家族は両親と兄の4人。
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