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コントレイル、無敗三冠で証明 ディープの最高後継馬 - 日本経済新聞

菊花賞を制し、史上3頭目の無敗での三冠を達成したコントレイル(左)と2着のアリストテレス=共同

菊花賞を制し、史上3頭目の無敗での三冠を達成したコントレイル(左)と2着のアリストテレス=共同

日本の競馬に革命を起こした大種牡馬サンデーサイレンスがこの世を去ったのは、2002年8月19日。サンデーの代表産駒であるディープインパクトは、父の死の5カ月足らず前の同年3月25日に生まれた。サンデーはディープ以前にも、フジキセキなど多くの後継種牡馬を輩出したが、「真打ち」は最後に現れたのだ。

時は流れ、ディープも昨年7月に突如、旅立ったが、父の死の直後にデビューしたコントレイルが、ディープ以来、15年ぶり史上3頭目となる無敗の3歳三冠を達成。父の最良の後継者であることを鮮やかに証明し、サンデーサイレンス→ディープインパクトと続く血脈が、確実に受け継がれようとしていることを印象づけた。

ディープの産駒は10年から実戦に登場し、コントレイルの菊花賞制覇で中央の平地G1で通算57勝。G1の勝利数最多は牝馬のジェンティルドンナで、中央で6勝のほか、14年にアラブ首長国連邦でドバイ・シーマクラシック(G1)も制覇した。文句なしの「代表産駒」である。

半面、G1を3勝以上した牡馬はコントレイルと、5歳で現役のフィエールマンだけ。フィエールマンの3勝は全て、近年は評価の下がっている距離3000メートル以上の競走で、最重要視される2000~2400メートルで勝ち星を重ねる馬がなかなか出てこなかった。

コントレイルは今回の勝利で、牡のディープ産駒として初の「G1で4勝」を達成。2歳G1のホープフルステークスと無敗での3歳三冠という内容面で既に、G1を制した他の牡の産駒を圧倒したといえる。現在1、2歳の産駒も残っているが、コントレイルがディープの最高の後継馬と記録されるのは間違いない。

コントレイルの今日の姿を、早くから予期していた人は少なくないかもしれない。デビュー2戦目の昨年11月16日、東京スポーツ杯2歳ステークス(東京・G3、芝1800メートル)の内容が衝撃的だったからだ。

英国の名手、ライアン・ムーア騎手を背に、8頭中5番手を追走。直線で促されると一気に先頭に立ち、最後は後続に5馬身差をつけた。タイムの1分44秒5は、07年の毎日王冠(G2)で出た3歳以上のレコードに0秒3差まで迫った。この時点で「来年のダービー馬は決まった」と思った人も多かろう。

父ディープは、生涯14戦が全て2000メートル以上で、レコードは06年天皇賞・春で1度出しただけ。コントレイルの東京スポーツ杯を見て、「父も短い距離を走ったら、こんなレースをしたのでは」と思った。

長めの距離を走り続けた父は、武豊騎手が暴発を避けるため、レース前半を馬任せで走らせた。短めの距離で、前半から持てるスピードを解き放っていたら……。競走馬の能力の本質はスピードで、ディープとコントレイルには、傑出したスピードという共通分母がある。

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父子のもう一つの共通分母は、馬体のサイズである。ディープは初戦が452キロで、4歳時のジャパンカップは16キロ少ない436キロ。ラストランとなった次の有馬記念も438キロだった。2歳から4歳といえば成長期に当たり、体重も増えて当然なのに、ディープは逆だった。

コントレイルも初戦が456キロで、ダービーと神戸新聞杯は460キロ。並みの馬なら「夏を越したのに成長がない」と言われかねないが、この父子には公式が通用しない。現代競馬では小型に属するサイズが、故障のリスクを減らし、圧倒的な速さを生かす土台となっている。差異を挙げれば、コントレイルの方がレース運びにそつがない。ここが3000メートルをこなす決め手となった。

18日の秋華賞を制したデアリングタクトとコントレイル。無敗の両3歳三冠馬は、ともに国内最大手の社台グループ以外の生産だ。デアリングタクトの長谷川牧場は北海道日高町の小規模生産者で、コントレイルのノースヒルズは、近年は絶滅危惧種となったオーナーブリーダー(販売でなく競走を目的とした生産者)である。

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デアリングタクトは父が国内最強のノーザンファーム(NF)生産のエピファネイアで、母デアリングバードは社台ファームの生産。長谷川牧場は繁殖牝馬セールで同馬を購入し、配合アドバイザーの助言でエピファネイアと交配した。社台グループは海外から新たな繁殖牝馬を積極的に導入する一方、自身で抱えきれない牝馬は売却し、国内の馬の質を底上げしている。デアリングタクトはその結実だった。

ノースヒルズは少数精鋭主義で主に米国から良質な繁殖牝馬を導入。また、鳥取県に現役馬向けの調教施設「大山ヒルズ」を備え、コントレイルの休養明けでの皐月賞制覇を支えた。同世代の牡牝のスターが、非社台生産だったことは、国内生産基盤の充実を示している。

無敗での三冠達成は序幕にすぎない。国内にはアーモンドアイもデアリングタクトもいる。海外にも強敵は多い。彼らとの対戦で、コントレイルの真価が測られる。

(野元賢一)

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