地方大会を含めて連戦や球数制限を考慮して、複数の投手で勝ち上がるチームが主流となっている。5人、6人の投手を起用して甲子園切符を手にしたチームは多く、浦和学院は埼玉大会に7人が登板。3-4で敗れた日大山形との初戦でも、4人がマウンドに上がっている。
投手の枚数が増えれば、捕手が担う役割は大きくなる。それぞれの投手の特徴を理解し、相手打者を打ち取るベストな方法を導く。指揮官の中には、捕手の役目を「代行監督」という人がいるほど、勝敗を左右する重要なポジションだ。
ベスト4をかけて対戦した智弁和歌山と石見智翠館は、どちらも2年生捕手で勝ち進んできた。
1カ月ぶりの先発投手を落ち着かせた配球
この試合、智弁和歌山の捕手・渡部海のリードとリズムが光った。先発は甲子園初登板の2年生、塩路柊季。公式戦の登板は和歌山大会以来、1カ月ぶりとなる。石見智翠館の先頭打者に直球を3球続けて全てボール。試合後に「ドキドキでした」と振り返った塩路は制球が定まらない。ただ、球威はある。渡部は力で押す選択をした。
直球のサインを続ける。フルカウントとして、最後も直球。空振り三振で最初のアウトを取った。2番打者にも直球のサインで押す。2ストライクと追い込んで、塩路が落ち着いたのを確認すると、この試合10球目で初めて変化球のサイン。140キロ前後の直球を主体とした配球で、初回を3人で抑えた。
渡部の評価を問われた中谷仁監督は柔らかな表情で「まだまだですね」と辛口な評価を繰り返した。
「落ち着いて配球をしているなと思ったら、最後に振り逃げという“オチ”をつくってくれたので、まだまだ手放しで喜べませんね」
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