故沢村栄治氏の功績をたたえ、シーズンで最も優れた先発完投型投手に贈られる「沢村賞」の選考委員会が23日に都内ホテルで開かれ、中日の大野雄大投手(32)が初受賞した。 開幕から13連勝のプロ野球新記録を樹立した巨人菅野智之投手(31)との一騎打ちとなったが、大野雄は45イニング連続無失点を達成したことに加え「防御率」「完投数」「完封数」「投球回」で12球団トップの好成績を残したことが評価された。

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沢村賞に初選出された中日の大野が23日、ナゴヤ球場で記者会見に臨んだ。受賞の知らせを電話で受けた際「すぐ隣に妻がいたので2人で喜び合いました」と明かし「すごくうれしかった」と、緊張した面持ちで喜びを語った。

評価された点を問われると「今年に関しては最後まで1人で投げきった数だと思う。沢村賞はプロに入る前も入ってからもほど遠いものだと思っていたので、まさか、という感覚です」と10度の完投が受賞につながったと自己分析。巨人菅野を抑えての単独受賞については「ぼくが言うのも変ですけど、菅野投手でも全然おかしくなかったと思いますし、その中で1人に絞っていただいた。選考委員の方々にありがとうございますと伝えたいです」と感謝した。

プロ10年目の今季は2月に開幕投手に指名されたが、度重なる開幕延期で調整に苦慮。6月19日の開幕ヤクルト戦は4回6失点KO。7月31日に完投で初勝利を挙げるまで7試合を要したが、ここから5試合連続完投勝利。その後も球団新の45イニング連続無失点を記録するなど無敵状態となり、2年連続の防御率1位と初の最多奪三振の2冠を手にした。

120試合制の特例シーズンで、1度もローテーションを外れることなく20試合に先発。10完投6完封、投球回数148回2/3、防御率1・82はいずれも12球団トップの圧巻の成績を残した。令和初の沢村賞に輝いた左腕は、今季初勝利を挙げた7月31日に取得した国内FA権を行使することなく、中日残留を決めた。中日では04年川上憲伸以来9人目の栄誉。来季の目標は「まずはチームの優勝。それを第一に置いて多少のリスクは背負いながら1年間しっかり投げたい」。竜のエースが、球界を代表する投手へと歩み始めた。