きょう6日目はラジオの仕事だ。アナウンサーとアクリル板で仕切った別々の部屋で放送する。互いに肉声は聞こえない。イヤホンとマイクでやりとりする。互いに顔を見ることもない。実に味気ない放送風景である。客席の声も一切、聞こえない。
やはり相撲は、声援と騒音の中で見るのが楽しいのだとしみじみ分かる。静寂の館内、看板力士を欠いた寂しい土俵。まだ半分以上も残っている。おそらく照ノ富士と貴景勝の2人が、中心になっていくのだろうが何しろ役者が不足していて手の打ちようがない。
こんな時に頼りになるのが小兵力士の活躍だが、今場所は翔猿もすっかり手の内を読まれて思うような相撲が取れない。炎鵬は何をやってもうまくいかず6連敗と大苦戦。十両落ちの心配すらある。照強も元気がない。若手の琴ノ若や豊昇龍も琴勝峰も頑張ってはいるが、勝ち越しが精いっぱいだろう。
もし救世主がいるとしたら、千代の国だろう。何度もけがに見舞われ辛酸をなめ尽くしてなお、くじけず再度幕内に返り咲いた不撓(ふとう)不屈の男。この千代の国が照ノ富士と貴景勝の優勝争いに加わることになると、相撲ファンが熱狂すること間違いない。いや、それしかない。徳勝龍や正代の時よりさらに大きな感動を呼び、日本人の琴線に触れることだろう。よし!この手で行こう。
7日目の相手は豊昇龍か。今はまだ千代の国の方が強い。10日目すぎまで全勝を続ければ、面白いことになりそうだ。九重親方は千代の国を「部屋の宝」と言ったらしいが、ぜひ協会の宝になってもらいたい。私も全力で応援しよう。私の孫弟子でもあるのだから、余計に力が入る。少し楽しみができたかもしれない。
ところで、またコロナの話で恐縮だが、きょうも東京は374人、北海道は235人も感染者が出ている。札幌で飲食店を経営している友人は、もう駄目だとギブアップしている。博多の中洲のスナックのママさんも悲鳴を上げている。中洲では600軒以上が閉店したとのこと。こんな話を聞く度に、私の心も折れそうになる。
それでも、腹は減る。食欲だけは健在だ。幸い京都の「蘭」から好物のサバずしが届いた。そろそろ食べたいなと思っている頃にタイミング良く送ってくれる。誠にありがたい。人生悪いことではないもんだ。
きょうから3日間、仕事が休みである。コロナがなければ、小旅行にでも行けるのにそれもかなわない。家で韓国ドラマでも見るしかない。そして、テレビで相撲を見てこの原稿を書く。結局はいつもと一緒であります。もう午後8時、腹が減って死にそうだ。今、原稿の催促の電話あり。人使いの荒い新聞社だな。これは冗談です。
(元横綱)
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