創価大の往路Vの一番の要因は、1区から5区まで全員が安定した走りをしたということだろう。想定外が続いた青学大はもちろん、2位の東洋大も3位の駒大も事前の想定タイム通りにいかない区間があったが、創価大は全員がほぼ想定通りに走った。
気象条件などが違うとは言え、創価大のタイム5時間28分8秒は昨年ならば9位相当に過ぎない。その意味では有力校が崩れて全体のタイムが遅くなったことで、結果的に普通に走った創価大が1位になったと言ってもいいのかもしれない。
創価大の4区・嶋津は今時珍しく厚底シューズを履いていない。厚底だとどうしてもぴょんぴょん跳ねるような走りになるが、嶋津は体幹がしっかりしていて上下動がない。地面をしっかり捉えて走るフォームは昔の瀬古利彦さんを彷彿させるような感じで、逆に新鮮だった。
5区の三上も1万メートルのベストは高校生並みの30分台。それでも強い向かい風をものともせず、上りも下りも安定した走りで芦ノ湖まで走り抜いた。近年「山の神」と言われた選手たちはトラックでも好記録を出していただけに、山上りに特化した三上の走りを見ていたら、嶋津と同じように何か昔に戻ったような印象さえ受けた。
先月の日本選手権でいい記録を出した選手たちの大半が今回ダメだったのも象徴的だった。箱根から逆算すると本来は一番走り込みをしなければいけない時期なのに、それができなかった影響はやはり大きかったのだろう。その点でも箱根1本に絞っていた創価大にとっては有利に働いたに違いない。
東洋大は戦前の予想よりもよく走った感じで、逆に駒大は思ったより走れていなかった印象だ。青学大は3区に予定していた神林の疲労骨折という想定外のアクシデントでチーム全体が崩れてしまった。練習自体はきちんとできていたはずなのに、直前にアクシデントがあるとあれだけの常勝チームでも負の連鎖で崩れてしまうものかと、あらためて箱根駅伝の怖さを感じたレースだった。(駅伝マラソン解説者)
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