阪神の福留孝介(43)が21日までに球団から戦力外通告を受けたことが明らかになった。球団サイドは将来的に指導者として迎え入れる構想があることも伝えたようだが、福留は現役続行を強く希望。他球団でのプレーを模索することになった。移籍先の最有力候補として可能性のあるのが、得点力アップが課題の古巣中日への復帰。来季44歳となる最年長プレーヤーの去就に注目が集まる。
極秘交渉で戦力外通告
阪神は21日までに兵庫県内のホテルに極秘で福留を呼びだし、来季の戦力構想に入っていないことを直接通告した。昨年は、生え抜きの功労者である鳥谷敬(現ロッテ)に試合前の甲子園球場内で、突然、引退勧告を行い、大騒動に発展することになったが、その“不手際”を反省したのか、今回の戦力外通告は、阪神で2013年から8年プレーした功労者に対しリスペクトをこめた丁寧な打診手続きを取った。 球団サイドは福留の意思を尊重。もし引退を選択した場合は、将来的に指導者として迎え入れたいというプランも示したが、福留は現役続行を希望。他球団でプレーする道を模索したいとの考えを伝えたという。 今季の福留は、巨人との開幕戦では「5番・レフト」でスタメンに名を連ねたが、その後、開幕戦を含む5試合のスタメン出場でヒットわずか2本、打点ゼロとエンジンがかからず、6月27日の横浜DeNA戦では、代わりにスタメン抜擢されたサンズが逆転本塁打を放ち、その後も得点圏で結果を出し続けたため、福留はスタメン出場機会をなくし代打に回った。 その後、世代交代を推し進めたいという矢野監督の方針もあり、今季のスタメン起用は、わずかに15試合にとどまり、ここまで43試合、打率.154、1本塁打、12打点とNPBの17年のキャリアでは最低成績に低迷した。それでも7月16日のヤクルト戦、同19日の中日戦では、続けて4打点の活躍をして存在感を示した。
試合勘を鈍らせないため志願してファームとのダブルヘッダーに出場するなどもした。9月18日の中日戦では、代打で貴重な犠飛を決めて勝利に貢献するなど、ここ一番では日米通算2000本安打を誇る技術力を見せつけた。 だが、9月19日に名古屋でチームが新型コロナの感染予防のため定めた「4人以内」などの内規を破って8人の大人数の会食を行う“不祥事”を起こした。この会食が原因と推測される新型コロナの集団感染が発生、福留自身は感染しなかったが、球団は福留を濃厚接触者扱いにして登録を抹消。その後、内規違反を理由に制裁金が科せられた。 福留は自らの軽率な行動に関して、深く反省、謝罪を行ったが、この一連の行動で、ここまで最年長リーダーとしてチームを引っ張ってきた信頼や立場は失墜。虎党の間にも失望の声が広まった。 球団サイドは、これらのグラウンド外の不始末の影響は、今回の戦力外の判断に一切関係ないとしているようだが、世間的には、どうしても戦力外の理由と結びつけられてしまう。自業自得とはいえ、その汚名を背負ったままユニホームを脱ぐことはできなかったのだろう。そして、なにより体力的にも技術的にも“まだできる“との自負が根底にある。この日も2軍戦でフル出場した。福留の闘争心という名の火は消えていないのだ。 では、来季44歳となる福留の獲得に乗り出す球団はあるのだろうか。 移籍先の最有力候補として浮上するのは古巣の中日である。中日は、過去にもトレード先だった阪神での年俸交渉に決裂し自由契約となった当時37歳の大豊泰昭を復帰させたケースや、楽天を戦力外になった山崎武司を43歳で10年ぶりにチームに出戻りさせたことがある。中日はドラゴンズのユニホームを着て実績を残し多大な貢献をしてくれた球団OBに対して特別な配慮をする傾向が強い。 1998年に逆指名で中日にドラフト1位入団した福留は、ルーキーイヤーから故・星野仙一監督のもと優勝に貢献。メジャーのカブスに移籍するまで9年の在籍で、首位打者を2度、最高出塁率タイトルを3度、2006年にはMVPを獲得して、中日でひとつの時代を築いた。福留の人気は、今なお名古屋では根強い。
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