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久保新天地ヘタフェ、ポジション争いのライバルたち - スペイン発サッカー紀行 - 海外サッカーコラム - ニッカンスポーツ

日本代表MF久保建英(19)が1月8日、より多くの出場機会を求め、半年間の契約でヘタフェに期限付き移籍した。デビュー戦で早くも結果を出し、高い評価を得た。

ヘタフェは2018-19シーズンのリーグ戦5位、昨季8位で、欧州リーグではアヤックスを破りラウンド16進出を果たすなど、そのクラブ規模を考えると近年、特に成功を収めているチームのひとつと言える。

今季のサラリーキャップ(移籍金の減価償却費や選手年俸などの限度額)は5260万ユーロ(約65億7500万円)でスペイン1部リーグ12番目と高くはない。4億6850万ユーロ(約585億6250万円)でトップのレアル・マドリードと比べると、約9分の1である。

ヘタフェを率いて5季目を迎えたボルダラス監督は、8月に昨季の欧州リーグを戦ったため、満足なプレシーズンを送れなかった。また、ベテランFWのホルヘ・モリナが退団したこともあり、FW陣の大型補強を敢行したが、先発メンバーのベースは昨季とほぼ変わらず、大きな戦力の上積みがないまま今季をスタートした。

新戦力でレギュラーの座を手に入れたのは、久保のマジョルカ時代の同僚クチョ・エルナンデスのみ。ワトフォードからの期限付き移籍で加入し、リーグ初戦から14試合連続で先発出場していた。現在、4試合出場停止処分が下っている他、ケガも負っている。

一方、ビリャレアルから移籍金900万ユーロ(約11億2500万円)で入団したトルコ代表FWエネス・ウナルは10番を背負い期待は大きかったが、リーグ戦13試合に出場しながらも先発出場はわずか4試合で無得点とうまくフィットしていない。加えて全治2カ月のケガを負っている。

さらにパラヴェルサ、ポベダ、ディアビ、モジェホを期限付き移籍で獲得したが、全員がボルダラス監督の戦力に入ることができず、今冬の移籍市場で放出候補になっている。

ヘタフェはリーグ開幕からの5試合、バルセロナ戦を含み、ホーム3連勝を達成して3勝1分け1敗と幸先の良いスタートを切った。しかしその後、11試合でわずか1勝、総得点数で1部最下位と得点力に苦しみ、降格圏間近まで順位を落とした。控え選手主体で臨んだ国王杯も3部コルドバに敗れている。

そのためボルダラス監督はテコ入れを図るため、今冬の移籍市場で中盤と右サイドの補強を求め、久保とアレニャの期限付き移籍での獲得に成功した。そして11日、スペインリーグ第18節で残留争いの直接のライバルであるエルチェと敵地で対戦。

ボルダラス監督は近年、4-4-2をベースに戦ってきた。今季もエルチェ戦前までのリーグ戦16試合のうち14試合を4-4-2、ケガ人や出場停止者が出た影響を受けた2試合のみ4-1-4-1でプレーしていた。

しかしエルチェ戦でボルダラス監督は長年培ってきたシステムを変え、今季初めて4-2-3-1で試合をスタートした。これはかつて、1部昇格プレーオフを勝ち抜いたヘタフェ監督初年度の16-17シーズンおよび、柴崎岳(現レガネス)が所属した17-18シーズンに好んで採用したシステムである。

この日がヘタフェデビュー戦となったアレニャはトップ下で先発出場して機能し、大雪の影響によりチーム練習ゼロのまま途中出場した久保は右サイドハーフに入り、2ゴールに絡む活躍を見せた。チームは3-1で勝利して順位を13位に上げ、総得点数も最下位から脱している。

今冬の移籍市場での補強がひとまず成功を収めたヘタフェでは今後、ボルダラス監督がどのような選手起用を見せるかに注目が集まる。その中で久保にとってベストと考えられる右サイドハーフを見てみると、今季のリーグ戦ここまで、ニョムが10試合、クチョ・エルナンデスが4試合、ポルティージョが2試合、マクシモビッチが1試合、同ポジションで起用されている。

久保にとって、現時点でポジション争いの最大のライバルとなる可能性が高いニョムはフィジカル面にたけた選手。本来のポジションである右サイドバックにダミアン・スアレスという絶対的な選手がいるため、昨季同様、リーグ開幕から右サイドハーフのレギュラーの座をつかんでいた。また、欠場者が出た場合、左右のサイドバックに入ることもある。リーグ成績は16試合(先発14試合)、1102分間出場、0得点2アシスト。右サイドハーフで10試合、左右のサイドバックで各2試合に先発出場している。

クチョ・エルナンデスは基本的に2トップの一角でプレーしているが、ニョムが他のポジションをカバーした場合、右サイドハーフに入っていた。リーグ成績は14試合(先発14試合)、1093分間出場、2得点3アシスト。右サイドハーフで4試合、FWで10試合に先発出場している。

2部時代からボルダラス監督の指揮下でプレーするポルティージョは今季、ずっと控えの立場が続いていたが、主力に出場停止者が多数出た年末のアトレチコ・マドリード戦でリーグ初先発を飾り、久保がデビューしたエルチェ戦でも右サイドハーフでスタメン入りしたため、久保の新たなライバルになり得る可能性がある。リーグ成績は7試合(先発2試合)、253分間出場、0得点1アシスト。

ボランチの不動のレギュラーであるマクシモビッチは今季、1度だけ右サイドハーフで先発起用されたが、その理由はニョムが左サイドバックでプレーしたため。リーグ成績は15試合(先発14試合)、1136分間出場、1得点0アシスト。先発14試合中13試合をボランチでプレーしている。

新加入のアレニャはエルチェ戦、最初はトップ下、後半途中からボランチでプレーした。今後、久保にトップ下やセカンドトップというオプションがある場合、競合する可能性があるかもしれない。

久保はこれまで左サイドハーフでもプレーしてきたが、ヘタフェの同ポジションはククレジャの聖域となっている。豊富な運動量とハードワーク、サイドでの突破力を武器に、今季ここまで、チーム唯一となるリーグ戦17試合全てにフル出場し2得点1アシストを記録。ボルダラス監督にとって絶対的な選手となっている。

フィジカル重視のサッカーを得意とするヘタフェは、そのファウルの多さやギリギリのラフプレーで対戦相手からたびたび不満の声が上がっている。実際、昨季のイエローカード数は130枚、ファウル数は706回でともにスペイン1部リーグトップだった。

後半戦に向け、既存選手と大きく異なるタイプの特徴を備えた久保とアレニャを補強し、その個性を生かすため、新たなシステムで臨んだ新生ヘタフェ。リーグ戦残り21試合、どのように得点力不足を解消し、巻き返しを図るのかに注目していきたい。【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)

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