5試合連続ドロー
基本的に勝ち点3を取り続ければ「強い」と評価され、勝ち点0が続けば「弱い」と評価される。しかし、勝ち点1が続く場合は評価が難しい。勝てていないという見方もできるし、負けていないという見方もできるからだ。
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ここ最近のボローニャは“負けないドロー”が多い。第12節スペツィア戦は2点ビハインドを追いついており、翌第13節トリノ戦は先制されながらも1-1に持ち込んでいる。そして第14節アタランタ戦は2点リードを奪われたものの、何とか食らい付き勝ち点1を奪っていた。
しかし、0-0に終わったフィオレンティーナとの前節を経て迎えた第16節ウディネーゼ戦の内容は、直近数試合とは大きく異なった。ボローニャは勝ち点1を奪ったのではなく、勝ち点1を奪われてしまったのだ。
前半は良い出来だった。コンパクトな守備でウディネーゼにペースを渡さず、19分にセットプレーから先制。その後ロベルト・ペレイラに同点弾を許したものの、40分にマティアス・スバンベリが得点し2-1で45分間を終えている。
ただ、残り45分間はボローニャにとって地獄だった。
後半開始早々にスバンベリが2枚目のイエローカードを受け退場。10人での戦いを強いられたホームチームは選手全員が自陣に戻り、強烈なアタックを浴びせてくるウディネーゼ攻撃陣に立ち向かった。
ロドリゴ・デ・パウルとR・ペレイラのアルゼンチンコンビは不気味に2列目を動き回り、ストライカーのケビン・ラザーニャは虎視眈々とゴールを狙う。それに対しボローニャ守備陣はゴール前で身体を張り、シュートやクロスを跳ね返し続けた。もはやこうなると、戦術どうこうはあまり関係ない。ボローニャ守備陣の粘り、ウディネーゼ攻撃陣の威力のどっちが勝つかという単純な戦いだった。
そして軍配はウディネーゼに上がった。91分に途中出場のトルガイ・アルスランがドリブルでボックス内に侵入しシュート。これがDFアーロン・ヒッキーに当たりそのままゴールへと吸い込まれた。
ボローニャは後半シュート0本、被シュート14本という内容だった。その中でよく耐えていたが、最後の最後で防波堤は決壊。退場がなければと言えばそれまでだが、非常に悔やまれる結果だった。なお、ボローニャはこれでリーグ戦5試合連続のドロー、9度目の複数失点となっている。
冨安のパフォーマンスは際立つ
さて、日本代表DFの冨安健洋はこの日もスタメンに名を連ね、90分間ピッチに立ち続けていた。チームとしては悔いの残るゲームとなったが、背番号14個人のパフォーマンスは際立っていたと言えるだろう。
19分にはフリーキックを頭で合わせ先制ゴールを奪取。GKファン・ムッソが一歩も動けない、力強いシュートでチームに流れを引き寄せた。
ビルドアップ時は基本的に高い位置を取らず3バックを形成して周りの選手をサポートするが、相手に隙があれば最終ラインを飛び出してサイドに厚みをもたらす。ベースは崩さずとも、ピッチ内の状況に応じて柔軟にプレーしていた。
と、さっそく攻撃面で存在感を示していた冨安だが、もちろん守備面での働きも光っていた。
4-2-3-1の右サイドバックに入った冨安がこの日マッチアップしたのは、オランダ代表のマルヒン・ゼーヘラール。身長186cm・体重86kgの体躯を誇る重量級で、獲物を狩る野獣のような迫力のあるランニングでサイドに厚みをもたらすことができる選手だ。
そんなゼーヘラールに対し、冨安はほとんどの面で上回った。自身の受け持つ右サイドを個人で突破されるシーンはなく、32分には身体を投げ出して1対1を制すなど、オランダ人レフティーに決定的な仕事を与えることはなかった。
先述した通り、後半に入り10人となったボローニャはウディネーゼの猛攻を浴びた。その中で冨安は右サイドに蓋をしたり、絞って中央を固めたりと大忙しだったが、判断ミスや技術的なエラーもなく守備者としての役割を完遂。チームとしては複数失点を喫したが、冨安自身が攻略される気配はまったく感じなかった。
データサイト『Who Scored』によるスタッツも申し分ない。パス数はチーム3位タイの31本で成功率は同2位の90%、キーパス1本も記録。空中戦勝利数4回は両チーム合わせてトップの成績で、被ドリブル突破数は0回となっている。「7.4」というレーティングはボローニャ内ではトップ、全体でも後半ATに同点弾を決めたアルスランに次ぐ2位となっているが、妥当な評価だと言えるだろう。
逆足を使えるというストロングポイント
現代サッカー界においてDFに求められるスキルは多い。単純な大きさやフィジカルの強さはもちろんのこと、足下の技術は高いか、攻撃時にどれだけ貢献できるかも重要なポイントとして見られるようになっている。
冨安はDFとして多くのスキルを兼ね備えている。対人にも弱くなく、クレバーで、足下の技術も水準以上だ。ウディネーゼ戦でもこれらは大きく証明された。
その中でも日本代表DFには特別なスキルがある。それは、逆足も難なく使いこなす点だ。実に単純ではあるのだが、これはかなり重要である。
右SBとしてプレーしたウディネーゼ戦でも、冨安が自然と左足を使う場面はいくつもあった。縦方向を切られても、左足を巧みに使うことで相手とボールの距離を離してパスコースを確保し、うまくボールを逃がす。右足を警戒されても、簡単に捕まることが一切なかった。
ナポリに所属する世界最高峰のセンターバックであるカリドゥ・クリバリも、プレーを観ていると自然と左足でボールを扱っていることが多いのが分かる。右足と比較するとややロングフィードの精度が落ちるのは否めないが、ショートパスの精度は右足と遜色ない。また、リバプールに所属する世界ナンバーワンCBフィルジル・ファン・ダイクも左足の技術は申し分ない。彼らがビルドアップで安定感を発揮できるのは、こうした逆足のハイレベルなスキルも一因となっている。
選手個人の特徴を分析して戦略に取り入れるチームは少なくない。たとえばチェルシー所属のクルト・ズマは逆足でのボール扱いが得意ではないので、プレッシャーを与える選手は右足を警戒しながら、というものが多い。そこで左足を使わせミスを誘発し、マイボールに持ち込む。チェルシーと対戦するチームはこうしてビルドアップを封じにかかることが多々ある。
冨安にはそのような心配はなさそうだ。クリバリらと同じく左足を巧みに使うことでビルドアップにおいて安定感を発揮できることはすでに証明されている。ボローニャとしても、実に頼もしい存在であることは間違いない。もちろんまだまだ完成形とは言い難いが、冨安はDFとして着実にワールドクラスへの階段を上っている。
(文:小澤祐作)
【了】
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