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五輪招致・延期決断、安倍元首相にIOC会長「約束を守る男に敬意」…スポーツ発展に尽力 - 読売新聞オンライン

 安倍晋三・元首相が8日、奈良市内での街頭演説中に銃撃されて死去した事件は、スポーツ界にも衝撃を与えた。安倍氏は昨年の東京五輪・パラリンピック大会に招致段階から尽力。新型コロナウイルスの感染拡大で大会中止論も噴出した2020年春には、史上初の1年延期を決断して開催に導いた。全日本アーチェリー連盟の会長も務めるなど、幅広くスポーツ振興に貢献した。

 東京大会の招致活動で13年9月、当時首相の安倍氏は国際オリンピック委員会(IOC)総会(ブエノスアイレス)で現地入りし、積極的にIOC委員との面会に臨んだ。招致説明(プレゼンテーション)では、東京電力福島第一原子力発電所の汚染水問題が取りざたされる中、「状況はコントロールされている」と安全な開催を確約した。16年リオデジャネイロ五輪では人気ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」の「マリオ」姿で閉会式に登場し、話題を集めた。

 コロナ下の20年3月には、IOCのトーマス・バッハ会長との電話会談で大会延期を決定した。悲報を受け、バッハ会長は「IOCは勇敢な支援者、友人を失った。最も感謝したのは、約束を守る男だったことだ。永遠に敬意を表する」と声明を出し、スイス・ローザンヌの本部に3日間、半旗を掲げるとした。日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長は「卑劣な暴挙は断じて許すことができない」と怒りをにじませ、IOC総会での安倍氏のスピーチに触れて「多様性を受け入れ、社会をつなぎうるというスポーツの根源的な価値を、これからも社会に伝えてまいります」とのコメントを出した。

 安倍氏は成蹊大アーチェリー部の出身。全日本連盟の宮崎利帳・前理事長によると、「俺は、そんなに強い選手じゃなかった」と話しながらも競技に愛着を持ち、男子団体銅メダルなど東京五輪での活躍を「これでアーチェリーも上昇気流に乗れる。選手たちが頑張れるように支援するから、何でも相談して」と喜んでいた。

 宮崎氏は「ショックという言葉しかない。世界連盟にも顔見知りの多い安倍会長とともに交流を深め、安倍さんにも、どんどん世界に羽ばたいてもらいたいと思っていた」と悼んだ。穂苅美奈子理事長は「ショックで残念でならない」と涙ながらに語った。

 安倍氏はスポーツ振興にも力を入れ、大相撲や競馬などの会場にも足を運んだ。19年に国内で開催されたラグビー・ワールドカップ(W杯)では、表彰式にも出席。「アベノミクス」と呼ばれた政策で「スポーツ産業の市場規模を15兆円に拡大する」と掲げた目標は、活性化の追い風となり、スポーツ観戦の技術開発、新アリーナ建設などが相次いでいる。

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