目には涙が溢れていた。0-2の展開から後半40分と後半アディショナルタイムの連続ゴールで追いついた昌平高(埼玉)。まだPK戦が残っていたが、自らの2アシストで2点ビハインドを跳ね返したMF須藤直輝主将(3年、鹿島内定)はラストプレーで同点に追いつき、思わず感極まった。
「頭が真っ白になって、何も考えられなくなって、気づいたら泣いていた。(0-2になって)あきらめてはいなかったけど、『俺らの選手権は終わりだ』っていうのが心の奥底ではあって、(追いついて)安心して泣いていた」
1年生のときから10番を背負い、今年はキャプテンも務める須藤の偽らざる本音だった。後半40分まで2点ビハインドという絶体絶命の状況から奪った2得点はいずれも須藤のアシストから。後半40分、相手のバックパスを奪うと、ドリブルで中に切れ込み、PA内右でフリーのMF篠田翼(1年)へ。「(篠田)翼はシュートがうまいので、シュートを打つ振りをしてパスを出した」。狙い通りの形で1点を返し、またも須藤がドリブルで見せた。
後半アディショナルタイム、左サイドから中に切れ込み、縦に仕掛けたところでファウルを受ける。PAすぐ外の位置で獲得したFK。自らキッカーを務めた須藤が蹴り込んだボールにMF篠田大輝(2年)が頭で合わせ、2-2の同点に追いついた。「審判からも『ラスト』と言われていた。自信を持って早いボールを入れたら決めてくれると思って、練習どおり早いボールを蹴った」という会心のキックだった。
「1点取られたあと、相手が戦略的に引いてきて、そういうゲームは予選でも何度かあったけど、全国では完成度が高くて、自分たちのプレーをなかなか発揮できなかった」。相手が自分たちのことを研究してきたことは肌で感じていた。苦しみ抜いた末の初戦突破。「改善点しかない。みんなでしっかり話して、2回戦に備えたい」。来年1月2日の2回戦では京都橘(京都)と対戦する。大会屈指の好カードとなる次戦に向け、背番号10は「この経験を生かして2回戦で爆発できるようにしたい」と意気込んだ。
(取材・文 西山紘平)
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