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阿部一二三、妹・詩と史上初同日金メダル「燃える気持ちしかなかった」 - スポーツ報知

◆東京五輪 柔道男子66キロ級決勝(25日、日本武道館)

 史上初の兄妹同日金メダルが実現した。男子66キロ級の阿部一二三(23)=パーク24=は決勝でマルグベラシビリ(ジョージア)に優勢勝ち。女子52キロ級の妹・詩(21)=日体大=も決勝で延長の末にブシャール(フランス)に一本勝ちし、同階級の日本勢初優勝。ともに初出場で栄冠を勝ち取った。柔道担当の林直史記者が阿部一二三の軌跡を「見た」。

 世界一かっこいい兄だった。一二三は決勝を制しても表情一つ変えず、相手をたたえ、正座して深々とお辞儀した。厳かな勝者の振る舞い。胸を張って畳を下りると、涙と笑顔が入り交じった。決勝の直前、控室で詩の優勝を見届けた。「燃える気持ちしかなかった」。ともに夢をかなえた妹と表彰式の前に「おめでとう」と抱き合った。

 「五輪チャンピオンと兄妹同日優勝。一日で2つの夢をかなえられた。23年間生きてきて最高に輝く一日になった。その喜びがこの金メダルに詰まっている」

 高校2年時の講道館杯で史上最年少優勝を飾り「東京五輪の星」と脚光を浴びた。豪快に一本を取る華のある柔道家。“天才”のイメージを持たれるが、座右の銘は「努力は天才を超える」。強さを支えるのは間違いなく“努力”にある。小学校時代、女の子に負けて涙した。悔しさから猛練習を始めた。一緒に汗を流した父・浩二さん(51)も「天才じゃない。1ミリを積み重ねて10センチ、1メートルにつなげてきた」と証言する。

 リオ五輪は逃したが、17年から世界選手権を2連覇した。国際大会で34連勝を記録。男子66キロ級は1強時代とみられたが、そこに丸山城志郎(27)=ミキハウス=が立ちはだかる。18年11月のGS大阪大会で敗れると、けがも続き、歯車が狂ったように勝てなくなった。「柔道人生で一番苦しかった1年。やっていることも変わらない。なのに何で負けるんだ…」と悩んだ。

 19年世界選手権で3連覇を逃し、後がなくなった。「プラスになることは全て取り入れよう」。就寝時間も食事も見直し、酒も断った。周囲がけがを心配するほど鬼気迫る表情で稽古に励んだ。3か月後に雪辱。代表の座は20年2月のGSデュッセルドルフ大会で雌雄を決することになった。

 だが、その大会を丸山が故障で欠場した。一二三は勝ち上がったが、準決勝で左手親指を脱臼。選考上はほぼ並んだ。最終選考会を見据えて決勝は棄権することも考えられたが、大会前に井上康生監督から「優勝が条件だ。丸山は全部優勝して覆した。東京で勝ちきるためには一二三もそれが必要だ」とノルマを課された。左手は握れない状態だったが、痛み止めを打って強行。一本勝ちで応えた。

 崖っぷちから全勝。昨年12月に丸山と日本柔道初のワンマッチ代表決定戦で24分間の死闘を制した。「丸山選手がいなかったら、心技体で本当に強くなれなかった」。人生で初めて認めたライバルの存在が、限界に挑戦する力となった。

 名前には「一歩一歩進んでほしい」という願いが込められている。五輪前、その意味と向き合った。「バンバン優勝したこともあったけど、全てが順調ではなかった。勝てない時も諦めず一歩一歩、前を向くことで先につながっていった。僕らしい名前だな」。努力は天才を超えた。そして、阿部一二三を超えた。(柔道担当・林 直史)

 ◆五輪同日の日本勢複数金メダル 4個以上は過去に2度。1968年メキシコ市大会の10月26日に5個を獲得。体操種目別で中山彰規がつり輪など3つで金。床運動の加藤沢男、レスリング・グレコローマン・ライト級の宗村宗二も優勝した。72年ミュンヘン大会の9月1日には4つを獲得。体操種目別で鉄棒の塚原光男など3つで金。競泳女子100メートルバタフライでも青木まゆみが制した。

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