試合後、唐突に取材陣に背を向けた浦和レッズFWホセ・カンテ。その目からは我慢し続けた涙があふれていた。今シーズン限りで現役引退を表明していたエースは、最後の埼玉スタジアム2002で劇的決勝ゴールを挙げ、ホームに集ったサポーターに別れを告げた。
カンテのホーム最終戦はベンチスタートだった。すると1-0で迎えた後半23分、途中出場する直前に失点を喫した。しかし、逆境への強さから心に灯をともす。同じく退団が決定しているFWアレックス・シャルクに一声かけた。「これは良い1-1だ。僕らが勝負を決められるんだからな」。シャルク、MFエカニット・パンヤの3人でピッチに出ると、勢いを浦和にもたらした。
そして、後半45分に劇的ゴールを決める。敵陣付近で混戦となったが、ボールはカンテのもとへ。「僕のほうにボールが飛んでくるとは予想していなかったが、コントロールしたときにはいいスペースが生まれていて、ボールもうまく跳ねていた」。ゴールを決める感性がいつも通りに目覚める。カンテは左足を振り抜き、ゴール右隅に突き刺した。
ACL王者はグループリーグ敗退危機に陥っていたが、カンテの決勝ゴールで望みをつないだ。グループ2位を確定させ、他グループの結果を待ちながら最終節に臨むことになった。
試合後にはサポーターの暖かい声援を受けた。囲み取材でも記者からは引退を惜しむ声が飛んだ。すると、おもむろにカンテは取材陣に背中を向ける。再び顔を見せると、目からは涙があふれていた。質問に再び答え始めたカンテだが、今度はともに歩んできた通訳の松下イゴール氏がもらい泣き。2人で抱擁しながら、感動を分かち合っていた。
カンテには7歳の息子がいる。海外で単身10年以上プレーを続けてきたが、愛する家族のために決意した。昨シーズンに滄州雄獅を退団した際に引退がよぎったという。
「そのときから少し考えてました。中国でのキャリアを終えた後に、あと1シーズンだなという風には自分で決めていました。だから、あまり自分では悲しいという感じではない。もちろんサッカーを愛している。だけど、ここでキャリアを終えるということに関しては納得しています」
「(息子が)僕を求めていたタイミングだった。これから毎日一緒にいられるということを、僕よりも喜んでいます。お父さんという立場で一緒に時間を過ごし、学校に連れていって迎えに行って、遊びたいときは一緒に行く。普通のお父さんをやりたい」
涙の理由を問われたが、それは本人にもわからない。いろいろな感情が交錯した。「質問されて初めて(この涙は)何なのかなと考えました」。サポーターからの声には「感情をコントロールするのが難しかった」と涙を我慢していたことを明かす。1年間を過ごした埼玉スタジアムを振り返りながら「前半1分から最後まで応援歌を歌い、すべての選手に愛を送る。正直見たことがなかった。僕がプレーしていた中でもベストスタジアム」と笑顔を見せていた。
(取材・文 石川祐介)
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