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W杯予選で圧巻ハットの上田綺世「いま友人が闘病中なので…」サイン入り試合球を大切に抱えていた理由 | ゲキサカ - ゲキサカ

[11.16 W杯2次予選第1節 日本 5-0 ミャンマー パナスタ]

 2026年の北中米ワールドカップに向けた栄えある初陣、日本代表の主役となったのは頼れるエースストライカーだった。FW上田綺世(フェイエノールト)は前半5分に大事な先制ゴールを奪うと、その後も2点を重ねてハットトリックを記録。徹底的に守りを固めてきた相手を粉砕し、華々しいスタートダッシュを切った。

 対戦相手はFIFAランキング158位と格下のミャンマー。同18位の日本をリスペクトして戦ってきた相手は5-4-1の守備ブロックを敷きながら、時にはサイドハーフも含めた7枚の最終ラインを並べ、徹底的に失点を防ぐ戦略を持って挑んできた。

 それでも前半11分、鮮やかな連係でその守備を打ち破った。MF南野拓実からの浮き球パスがゴール前に入ると、完璧なタイミングで反応した上田がヘディングシュート。後ろから来たボールに体勢を崩しながら合わせる形となったが、うまく当てたボールがゴールマウスに吸い込まれた。

 上田は「スペースがない中でも背後への動きでわずかなスペースを作る、またはボールを受けるために出て抜けてというのを継続してやる意識は持っていた。ど真ん中だったけど良い形でボールをもらえて、あれはボールが良かっただけ」と謙遜気味に振り返ったが、早い時間帯での先制点は狙っていたもの。「より早い時間帯で点を取るというのは引いてくる相手に対してすごくプレッシャーになるし、逆に取れないと僕らにプレッシャーになる。そこで崩せたのが良かった」と手応えを語った。

 またMF鎌田大地のゴールで2-0とし、迎えた前半アディショナルタイム分にも結果を出した。今度はカットインを試みたMF堂安律からのスルーパスに反応し、角度のないゴール右斜め前から右足でズドン。「前日から律がカットインしてきた時、FWに当てたり、背後に当てたりというのは話して合わせたりもしていた」という東京五輪世代の連係と、上田の類い稀なシュートセンスが絡み合ったゴールだった。

 上田は後半5分にも南野の浮き球パスに反応し、ハットトリックを達成。南野からのお膳立てで2点を決めた形となった。「狭いスペースでも前を向ける選手だし、僕がああやって抜けることによって仮にボールが出てこなくても、ドリブルするスペースを空けられたらいいなという二つの意図があった。2本とも出してくれたけど、出さなくてもメリットがあるというのを意識していた」。今後にも期待ができる好連係だった。

 上田自身は試合後、ハットトリックの活躍にも「ホッとしているのが正直なところ」と控えめに喜びを表現。それどころか「正直相手が相手なので、そこまでの価値はないのかなという気持ちしてしまう」とも口にし、「何点でも勝つということが大前提なのでそっちのほうが重要かなと思う」と気を引き締めていた。

 とはいえ相手は日本が先制点を奪った後も徹底的に守備を固め続けており、「0-5で負けていても時間を稼ぐし、そこまでしてくるとは思わなかった。逆にやりづらかった」とも感じていたという上田。そうした中でも相手の守備ブロックを破ったクオリティーは、間違いなく今後のアジアの戦いでも大きな力になりそうだ。

 またそんな上田だが、この日の3ゴールは数字以上の意味もあったという。

 欧州ではハットトリックを記録した選手に試合球が贈られ、そこにチームメートのサインを入れてもらうことがよくあるが、上田も試合球を大切そうに抱えてミックスゾーンに登場。「僕の友人がいま癌で闘病中なので、そこに送ろうかなと思う。(アウェー移動のため)持っていく時間がないので送るしかないんですが、ちょっとでも力になればと」。病と闘う友にも大きなパワーを送る大活躍だった。

(取材・文 竹内達也)

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