今季は前半から調子が上がらず、陸上世界選手権の代表入りが正式決定したのは大会直前だった。それでも、「ここからが本当にスタート」と焦りはない。男子100メートルで2022年大会7位入賞のサニブラウン・ハキーム選手(24)=東レ。2大会連続決勝進出への確かな自信をインタビューで打ち明けていた。
「世界選手権に出るというのは、マストだったので。欧州では最終的には悪くないタイムを出せた。(出場を逃す)焦りがあったというよりは、とりあえずやることに集中して今に至る感じですね」
インタビューに応じたのは、日本陸上競技連盟が代表を発表してから2日後の今月9日。安堵(あんど)感によるものよりも、いつも通りの物おじしないリラックスした雰囲気をまといながら語り始めた。
左脚がつり、決勝で最下位(8位)に終わった6月の日本選手権(大阪市)で世界選手権代表を確定させられなかったものの、復調には自信を見せていた。
7月下旬まで世界最高峰シリーズのダイヤモンドリーグをはじめ、欧州各地のレースを転戦。当初は10秒2~3台と今ひとつだったが、同月20日のスイスでの大会で10秒09をマークし、代表の座をたぐり寄せた。
「(例年より早い6月初旬開催だった)日本選手権では、レースでのスピードに体が耐えられる準備ができていなかったのかも。イレギュラーな変化があった時の体の反応など、いい経験ができた。正直に言って、収穫です。次はうまく対応できる」
21年夏に行われた東京オリンピックは200メートルで予選敗退。その原因となった腰のヘルニアは既に完治した。日本選手権でのアクシデントは、久々に違和感なく走れる喜びを感じるさなかで自戒を促す出来事だった。
「結果を残さないと切られる」
前回の世界選手権より約1カ月遅い開催を追い風に、ピークを迎えられる手応えもある。
日本選手初の世界選手権男子100メートルファイナリスト。あれから1年、サニブラウン選手の目標はこれまた日本選手初の9秒8台、さらに表彰台と上方修正されている。今季前半戦の結果から言葉こそ控えめだが、不可能なことではないとも感じている。
「ケガをしない、というのがもちろん大前提。一歩一歩……大きな幅じゃないけど、徐々に成長しているかな」
フィニッシュ後にへたり込んだ前回決勝では、終盤でのトップスピード維持という課題を改めて突きつけられた。全力を出していても、どこか余裕があるトップ選手たちの風格にも圧倒されたという。
一方で、世界と肩を並べるスプリンターへの期待は大きく、5月には化学大手・東レとの所属契約が発表された。単なる広告塔としてだけではなく、素材の共同開発や環境保全活動などへの参加も期待される。責任感はいや増す。
「大学(フロリダ大)を拠点にしていたときはよく分かっていなかったけど、(所属する米国のプロチームで)結果を残さないと切られるという厳しさを知った。『死に物狂いでやるメンタリティーを持たなければ』という考えが根付いたように思います。企業を含め応援してくれる方が『一緒に頑張ろう』と支援してくれているので、しっかり誠意を見せたい」
世界選手権を終えると、24年パリ五輪が控える。出場すれば2回目となる五輪は東京大会の雪辱を期す場になるはずだが、サニブラウン選手はもっと気軽に構えている。東京五輪は新型コロナウイルスの感染拡大の中で開かれた。
「結果やコロナ禍で観客がいなかったということもあって、東京五輪は実感が湧かない大会だった。パリは結果もこだわりたいけど、自分としては『楽しみたい』というのが一番ですね。世界選手権や五輪といった大きな大会で自分が走ることで、多くの人にいろんな感情を与えることができれば、と思います」
勇気や元気といった「定型句」には、とどまらない。世界選手権では、人々の感情を揺さぶるレースを見せる。ただ、それだけだ。【ブダペスト岩壁峻】
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