「過去は変えられないけど、未来は変えられる。公式戦では8年間、リーグ戦では13年間、仙台に対して勝利がない。この数字は強調しましたし、2023年のチームで新しい歴史の1ページを作っていこうと選手たちに伝えました(渡邉晋監督)」
公式戦通算43回目の“みちのくダービー”は、ホームのモンテディオ山形が大量4得点を奪い勝利した。前述の通り、対ベガルタ仙台における勝利は、2015年のナビスコカップ(現ルヴァンカップ)の予選第6節以来。リーグ戦では2010年7月に行われた第13節まで遡る。山形を率いる渡邉監督は「素晴らしい雰囲気の中、サッカー選手としての醍醐味を感じながら躍動したと思います。前半に良い入りから先制することができて、膠着する時間帯もありましたけど、我々が準備していたものを発揮して、追加点を奪う展開に持っていくことができました」と総括した。
この試合のヒーローは紛れもなくFW藤本佳希だ。アウェイでの第15節でも得点を挙げていた背番号11は、右足・左足・頭での“完全ハットトリック”を達成。76分までピッチに立ち、全4得点を叩き出して山形を勝利に導いた。みちのくダービーの歴史に残る大活躍の要因について、藤本は「サポーターの熱量が違いますし、ダービーは一番勝ちたい試合です。生きるか、死ぬかみたいなものを感じましたし、それが僕の力をより引き出してくれた」と語る。なお、1試合4得点は「アマチュア時代(高校)以来」。「ハットトリックもプロ入り後初めてですし、前半で2点を取っていたので『後半に絶対もう1点取る』と自分を洗脳していた(笑)」と笑顔で振り返った。
前半終了間際の40分に見事な連携から左足でゴールを沈めると、一目散に指揮官のもとへ。「仙台側のゴールでしたし、早くみんなで喜び合いたかった。1点目よりもしっかりとしたゴールだったので、より嬉しかったです」と藤本。渡邉監督は「佳希が来てくれたことは、すごく嬉しかったです。今季はいろいろなタスクを課していて、それをやり続けることでゴールから遠ざかることもあった。それが申し訳ないという話もしましたし『必ずチャンスは来る。そこを決め切る存在であってほしい』と伝えていました。彼とは信頼を築けているので、いつか必ず爆発してくれると思っていました。僕に飛びついた理由は本人に聞いてください(笑)。けど、一人の指導者としてこんなに嬉しいことはないですし、彼への信頼はより一層高まります。もっともっと得点を重ねていってほしい」とさらなる期待を寄せた。
取材・文=三島大輔
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