幼馴染の2人が抱き合ってピッチに倒れ込んだ。97年生まれのMF三笘薫と98年生まれのMF田中碧。学年こそ1つ違うが、同じ川崎市出身で、ともにさぎぬまSCから川崎Fの下部組織に入団し、プロ、そして海外へと飛躍していった。川崎Fのサポーターからは「鷺沼兄弟」の愛称でも親しまれた2人が、日本代表のチームメイトとしてW杯のピッチに立ち、スペインを破る大金星の立役者となった。
「(田中)碧が決めたのは何かあるなと」。三笘は決勝点のシーンをそう振り返った。MF堂安律の同点ゴールで1-1に追いつき、勢いに乗る日本は3分後の後半6分、堂安が粘って右サイドから折り返すと、ファーサイドに詰めた三笘が体を投げ出し、ゴールラインぎりぎりから折り返した。これを田中が右膝で押し込み、ゴールネットを揺らす。一度はクロスの前にゴールラインを割っていたと判断されたが、VARの介入があり、得点が認められた。
「何とか残してくれるんじゃないかと信じていた」(田中)。そう信じてボランチの位置からゴール前にまで詰めていた田中について、三笘は「なんでああいうところにいるのか分からない」と冗談交じりに笑った。「彼の走力というか、守備で頑張っていた、見えないところで頑張っていたご褒美だと思う」。1歳年下の頼もしい後輩を称えた。
三笘からのアシストでゴールを決めたことについて「それもうれしかった」と素直に答えた田中は「正直、(ラインを)出ているかなとも思ったけど、入ってよかった」と笑みをこぼし、「あそこに入っていくのはずっとやってきていたこと。結果を残せてよかった」と、殊勲の決勝点に胸を張った。
(取材・文 西山紘平)
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